ラップ口座に次ぐ「NISA口座」の誕生である。2004年に緩和されたラップ口座の最低預入金額は2,000万円であった。現在は野村證券、みずほ証券が500万円、大和証券、SMBC日興証券が300万円と大幅に引き下げられているが、「ファンドラップ口座」を開設している投資家はまだそれなりの知識を持っていると見られている。
しかしNISAで投資する個人の大半はムードで参入することになりそうだ。アベノミクスの成長戦略によって当面は追い風を受けるかもしれないが、株価は日本国内の景気動向だけではなく、世界の経済情勢や政治情勢によっても乱高下するものであり、ずっと上昇をし続けるものではないことは過去の日経平均株価の推移によって明白である。いずれ何年か後に株価が下落し、NISAに投資した多くの「にわか投資家」に損失が発生する事態になれば、その勧誘方法を巡るトラブルが頻発する可能性も秘めている。
景気回復の流れを受けてNISAの口座開設は400万件超えたと見られている。証券会社と銀行が激しい口座獲得競争をしているが、銀行が扱えるのは株式投資信託のみであるのに対し、証券会社は上場投資信託だけではなく、上場(含む外国)株式や上場投資信託(ETF)、また上場REIT(不動産投資信託)など幅広い商品を品ぞろえしており、圧倒的に優位な戦いを展開している。というのは、NISAは一度開設すると4年間は他の金融機関に乗り換えることができないという制約がついているからだ。
ここでNISAの受付から本格的なスタート後の日経平均株価の推移を見てみたい。
・NISA(ニーサ)の受付が開始された13年10月1日から日経平均株価は順調に推移し、年末には16,291.31円となり、1,806.59円上昇している。
・NISAが本格的にスタートした2014年の大発会(1月6日)の日経平均株価は15,908.88円(前年末比▲382.43円)と値を下げてはいるものの、2013年の大発会(1月4日)の10,688.11円と比較すると5,220.77円と大幅な値上がりである。
だが1月6日に1万6,000円台を切ってから日々乱高下を繰り返し、一本調子の上げが見られず神経質な相場展開となっている。そのため口座を開設したものの、いつ買いを入れるべきか躊躇する局面が続いているようだ。証券業界では1万8,000円台を付けるのは時間の問題との見方をしているが、果たしてそのような展開となるかどうか。たとえ「にわか投資家」であっても、株価下落による損失で泣きを見るのは本人であり、ムードに頼ることなく自己責任による的確な投資判断が求められている。
※記事へのご意見はこちら